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The Digsaws @ 心斎橋HOKAGE



心斎橋のHOKAGEで、この間、ライブハウスのスケジュールをDIGってて発見したバンド、The Digsawsのライブを見てきた。


HOKAGEのブッキングライブに来るのも久しぶりだ。前に来たのはThe Foglandsのライブだっけ?あの時は客が対バンの人も含めて2人しかいなかったんだよなー、とか思い出す。今回も平日だし、もしかしてまた2人だろうか?と思ったが、さすがにそうではなかった。


心斎橋HOKAGEはB1がライブフロア、B2がバーカウンター&楽屋になっている。案内もないしわかりにく。B2に降りても手前に部室みたいな楽屋があって奥にバーカウンターがあるのだ。おそらく初めて来た人はわからないであろう。わからなくてドリンクチケットを握りしめたまま帰ってしまう人もいるんじゃないかと思う。
しかしなぜか気にならないのがHOKAGEの持ち味。こういう不便さすらも、味わいと思わせてくれる懐の深さ。
ライブフロアが煙草の煙で充満し、安い焼肉屋みたいになってても気にすることはない。ここはそういうところなんだから。


ハイネケン(缶)を受取り、ライブフロアの隅の破れたソファーに座りながらThe Digsawsの登場を待つ。フロア中をグルグルと照らす、まるで意図がわからないミラーボールの照明もいいじゃないか。
ブッキングライブ特有の、お互いの出演者を気にかけない(かける必要もない)。セッティング中も誰も注目してない。ぬるい空気感が良い。
個人イベントの「さー、さー楽しもうぜ!」というのは居心地がわるい。特に平日なんかはこのほっといてくれる感じがいい。汚いのれんがかかった大衆食堂みたいな。食い終わった後にジャンプ読んでても問題ない、あの自由さが好きだ。
そんな水曜日のHOKAGEを味わってるとThe Digsawsが登場する。


冒頭からスピードパンクの「Evil Clown」!
まるで放課中に怖い先生が入ってきた中学校の教室のようにフロアに緊張感が張り詰め、ブッキングライブのぬるい空気を一気に吹き飛ばした!
ダウンピッキングのベースに叫ぶボーカル!リバーブが混ざったディストーションのギターサウンドもやっぱ良い。音量がでかくてもちゃんとメロがあって特徴出てる。おととし観たPalma Violetsもこういう音してた。今の時代の音を選択してると思う。90sのグランジと今の10sのグランジアプローチとは実は明らかに違う。抑えめのAメロからサビで絶叫するパターンを指して「NIRVANAじゃん」とか言われるんだろうか。でもわかる人にはわかると思う。


そんなことどーでもいいと言わんばかり(実際にはノーMC)にThe Digsawsは我がサウンドを突き通す。気が付けば3曲目で5分半にも及ぶ長尺インスト曲(もしかしたら2曲続けてたのかもしれないけど)に突入していた。
そしてインスト曲を終えた後の後半2曲はキャッチーなリフが特徴的な『Deeds Of The Witch』と『Nightcrawler』。サンクラの音源で聴いてた印象よりもかなりパワフルで迫力が伝わってさらかっこよく聞こえた。



結論として、The Digsawsは音源も良いけど、ライブはさらに助長するようにかっこいい。生で見れてよかった。まだ2回目くらいのライブらしいけど、演奏も上手だし、聴き手を引きつけるパフォーマンスもあると思う。楽曲とかサウンドがやや偏りがちだけど、絶対たくさん音楽を聴いてて、ポテンシャルを持ってるバンドだと思うので、いろんなバリエーションを持った曲があったらさらによくなると思った。これからが楽しみなバンドだ。




 



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ホテル・ドミニク インタビュー ~アルバム『Hotel Dominik』リリース記念~

ホテル・ドミニクのEP『Hotel Dominik』が Ano(t)raks×タワーレコードの新レーベル<LUCK>より2016年12月21日(水)にリリースされた。
ホテルドミニクジャケット

ホテル・ドミニクは京都在住、20代の4人組による日本語バンドだ。
過去に別名のバンドで数回ブッキング・ライブに出演し、そのライブ会場でほんの数枚の自主制作CDを配った程度。表立った活動はほとんどしていない。"ホテル ドミニク"名義では今作以外の音源もなし。ライブ履歴もない。たいした実績もないバンドである。
しかしながら、インディミュージックの重要レーベルである
Ano(t)raksのオーナーが惚れ込み、本作のリリースに至ってるのも事実だ。

実際、楽曲のアレンジは
まるでベテランミュージシャンが作ったような完成度をしているし、作品にはすごく特殊な情緒が詰め込まれている。それは土着感なのか、異国的な感覚なのか、あるいはいつか聴いた懐かしさなのか、いまいち説明がつかない心地良さや緊張感で心が揺すぶられる。

どのような背景、どのような感覚で作り出したのか。「謎の4人組」とされている彼らの素性にも少し迫りながら、メンバー4人に取材をした。

ホテルドミニクメンバー

















アーティスト:稲妻(Vo&Dr)、辻( Ba)、鈴木(Gt)、岡野(Gt) 
インタビュー&text:TJ
2017年1月8日 場所:京都某所

ネット上に情報が無いから「謎の4人組」に
ー音楽ニュースの記事とかでは「謎の4人組」になってるよね(笑)

稲妻:なんかそういうことなんですよね。謎のバンドです(笑)。

辻 :ネット上に情報が無いんですよね。だからそういうキャッチフレーズになったと思います。たぶん。

ーどういう経緯で<LUCK>からのリリースになったの?

稲妻:3年前に録った音源から1曲だけ(『緑の肖像』)Sound Cloudにアップしてたんですが、Ano(t)raksのオーナーの小笠原さんがどっかから見つけてくださって、そこから行 達也さん(タワーレコード/
<LUCK>)も紹介していただいて。
それでメールを介して「新しくタワーレコードでレーベル<LUCK>をやるので契約しませんか?」って声をかけていただきました。

辻 :小笠原さんがTwitterでSound Cloudのアドレス貼って「このバンドの情報求む!」って情報募ってたんだよな。

稲妻:そうだ。そこに僕らのアカウントを連絡してくれた方がいて繋がったんです。

ーやっぱ謎のバンドなんだ(笑) Ano(t)raksの存在は知ってたの?(※LUCKは Ano(t)raksとタワーレコードのコラボレート・レーベル)

稲妻:知らなかったです。その前はどこかにデモテープ送ろうかって話してたんですよ。

辻 :バンドの方向性について、ライブはやらずに音源製作中心でやろうかって話合ってた矢先だったんで、ちょうどベクトルが合ったんです。

ー作品がいろいろな人に届いてる実感はある?

稲妻:まあ、Twitterとかで反応は見ます。でもまだ実感は無くて客観的に見てしまいますね。

辻 :鹿児島に行った時にタワレコに寄ったら置いてくれてましたよ。

稲妻:関西のお店は挨拶に行ってますが、ポップを出してくれててありがたいです。仙台の店舗で視聴機に入れてくれてるみたいです。

辻 :それとラジオで流れるって思ってなかったんで、結構うれしいですね。

鈴木:SoundCloudに上げてただけで全国リリースになったんで、はっきり言ってまだ意味わかんないですね。

ー良い曲作れる才能があれば見つけてくれるんだね。ていうか1曲だけでよく契約になったよね。

鈴木:他の曲聴かせてください、とかもなかったよね。

稲妻:初めて東京で行さんに会った時に「もっとおじさんが来ると思った」って反応だったんですよね。

"正体"が掴めないからむしろ直感的に聞けると思う
 
ーまさか20代とはね(笑)。でもその勘違いも理解できるんだよ
。ホテル・ドミニクの曲って、80年代を体験してる人に生々しい懐かしさを連想させるんだよね。これは意図的にしてるの?

稲妻:昔の雰囲気を出すつもりも、歌詞で物語性とか意味を特定させるつもりも全然無いんです。普段音楽を聴いていて、歌詞の内容がとらえづらいものでも、切れぎれに聞こえてくる言葉で、何となく絵とか映像が浮かんでくることがよくあるんですが、それが年代とか喜怒哀楽がはっきりしたものではないんです。

"郷愁"と言っても、いわゆる懐古趣味的なものではなくて何が懐かしくさせてるのか、正体が掴めない感じだと思います。なので内容が明快でない分、むしろ直感的に聞いてもらえるかなと思いました。

ー逆に自由に想像できるようにしてると?

稲妻:曲を聴いてどんな情景を引っ張り出してくるかって、時間も空間も人によってズレがあった方が面白いと思いました。そういった時代的な脈略を省いた感覚で、音像とか歌詞を作りたいというのがあるんです。
今は古い音源から曲を作ることがすごく容易で、そういうアプローチのバンドが確実に増えてると思うんですよね。過去の音楽に近づけるやり方が全然珍しくない。
だから、年代とかジャンルといったわかりやすい括りで期待通りのことをやるよりも、聴いてる方がちょっと肩透かし喰らいながら楽しめるものにしたいと思ってました。

辻 :狙いが狭くないんですよ。直接的じゃないけど新しい音楽の要素もありますよ。

岡野:時代やジャンルをあまり意識せずに聴いてもらいたいです。

石川セリみたいに新しいリズムに歌謡曲の要素を混ぜる

ー今回収録の曲はリリースが決まってから新しく作ったの?

稲妻:M5『緑の肖像』以外は新しく作ったり前からの曲を大きくアレンジしてます。















   
ー『緑の肖像』は特にイントロとかサビがシングル曲っぽいわかりやすい曲だよね。

稲妻: 何年か前にライブで演奏しやすいように作った曲なんですよ。でもその頃の曲って自分たちが普段聴いてる曲と隔たりがあったんですよね。今はバンドで表現できる幅も広がったし、レコーディング作業でその隔たりを無くすこともできると思ったんで新しい曲を作ったんです。作った時期が違う曲が並んでるんで、アルバムとしてのコンセプトが無くなることを気にしてましたが・・
   
鈴木:そう、それは心配してた。

稲妻:曲を作っていく中でバンドのいろいろな側面が見えてきたんで、「なんでもやります」っていう風にとってもらえればいいかなと思うんですよね。

ー確かに個性が際立つ楽曲が揃ってるよね。作曲にあたって、インスピレーションになるような楽曲とかあった?

稲妻:うーん・・『パドバスクの影絵』のアレンジを決める時に言ってたのはイアン・デューリーの『inbetweenies』ですかね。
ー意外。パブロック?

稲妻:パドバスクは全体的に歌謡曲のテイストなんですけど、イアン・デューリーの湿った感じの音像とかリズムが混ざったら面白いかなと思ったんですね。

ー結構ロックな洋楽だったり、そのまま歌謡曲から着想することもあるんだね。

稲妻:相性がいいと思ってたんですよ。石川セリとかビブラトーンズが新しいリズムに歌謡曲の要素を混ぜるみたいな曲の作り方してて、今こういうのやってるバンドはないかなと。曲に対してのイメージもそれぞれ共通するものがあったと思うので。

ー結構ロジカルな思考で作曲してるんだね。

稲妻:全然脈略のないことに親和性を見つけて、それが馴染んだりすると、別の側面で自分の好きな音楽を発見できて面白いんですよね。

鈴木:あと、モコモコとした湿っぽい音の質感のニュアンスをエンジニアの方に伝えるためにSLYの『Family affair』で説明したりしましたね。
ーこの曲は特に顕著なんだけど、歌謡曲っぽいメロディの裏でベースラインがリズミカルな動きをしてて、曲のシリアスさとかクールさを際立たせてると思うんだよね。

稲妻:リズムが強い肉体的な音にしたくなかったんですけど、逆にゆるいのも嫌だったので。コッテリとして気持ちよさも入れたくて、ベースはそういう要素を担ってると思いますね。
辻 :目立つフレーズが多いんで、レコーディングでは出来るだけエレキっぽいうるさい音じゃなくて馴染む音になるように気を付けてました。

ー『屋上庭園にて』はどう?リズムボックスとシンセの音色の効果で良い感じで緩やかなムードが出てるよね。

鈴木:Shuggie Otisの『Island Letter』は、リズムボックスやモヤっとした音色の鍵盤から連想される気だるい雰囲気に、ストリングスやグロッケンの音が重なるシュールな感じがいいなと思って、サウンドの参考にしてました。

稲妻:元々はジョージ・ハリスンの『Pure Smokey』みたいな泥臭い感じだったんですけど、曲が持つ雰囲気に馴染むようにアレンジとか歌詞を考え直しました。
さっきも言ったんですが、絵とか映像のイメージが頭の中で出来てくるんで、それを色々な要素で一つの曲に落とし込むという作り方をしてましたね。
 

(ライブは)行って帰ってくる思い出しかない(笑)


ーやっぱいろいろな音楽の要素が詰まってるみたいだね。このアルバムを気に入ってライブを見たい人もいると思うんだけど、予定は?

稲妻:ちょっと今メンバーが忙しいってのもあって予定はないんです。

岡野:前にライブしたのっていつだっけ?2年前?

ーバンドしててライブしたいって思わない?

稲妻:思わないですね。

鈴木:曲作りや音源制作の作業の方が好きですね。ライブが楽しいって感じたことはないかもしれないです。

稲妻:行って帰ってくる思い出しかない(笑)
でも今回作った音源でどんなライブになるか自分でもわからないので、(もしやるなら)その辺を楽しみながらできるとは思いますね。

ー過去の音源をディグる話は聞いてきたけど、逆にここ1、2年にリリースされたものとか、みんなどんなの聴くの?

岡野:ケンドリック・ラマーとか。

鈴木:マック・デマルコとかみんな聴くよね。

辻 :僕はデビッド・ボウイとプリンスの新譜。あとディアンジェロかな。

ーやっぱジャンルに偏らないね。ブラック・ミュージックは気になる?

岡野:最近は面白いですね。ちゃんとルーツを押さえながら、広いところからいろいろなアイデアを持ってくるところがあるんですよ。

稲妻:時期的にちょうどいいんだろうね。JAZZ とかHIP HOPとかR&Bとかあまりジャンルにこだわらずそれぞれ自由に行き来してる気がしますね。

辻 :ちょうど若手で面白いことやってた人が今30代くらいになってきて、エネルギーが爆発してる感じがありますね。
ーここ数年でシティポップが由来と言われるバンドが結構出てきたじゃない?ミツメとか、森は生きているとか、Yogee New Waves とか、 Never Young Beachとか。そういうバンドを聴いたり、シーンから影響を受けたりする?
稲妻:シーンとかそういうところから影響は全くないです。
岡野:無いな。
ーそういったバンドはよくわかりませんと?
稲妻:聴かないですね。
辻:でもたぶんCD出せた背景は、たまたま上げてた『緑の肖像』がその文脈に引っかかったんじゃないかな。そういう意味では無関係とは言い切れないですね。こっちはシティポップとは思ってないけど、聴き手にとってはそう思われることがあるだけで。
岡野:僕ら都会育ちじゃないんで。

ーシティね(笑)次回作を作る話は?

稲妻:いや、ないですね。レーベルとも1枚の契約だから。

ーじゃあ、もしまたリリースするとしたらまたちょっとモードは違ったりする?

鈴木:もっと肉体的にしてプレイヤー感が出てもいいかなと思いますかね。

稲妻:今回は作るうちにサウンド全体が調和されていたところがあるんですが、もっとリズムが立ってて、楽器が自立して聴ける、尚且つ、トータル的にバンドとして聴けるのもいいかな。
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■ホテル・ドミニク @hoteldominik

京都在住、稲妻志樹(vo,dr)、辻浩季(bs,cho)、岡野宏紀(gt,cho)、鈴木敢士(gt,cho)の4人によって結成された日本語バンド。12月にタワーレコード内のインディーレーベル<LUCK>よりアルバム『Hotel Dominik』をリリースした。


https://twitter.com/luck_anotraks


NAHAVAND インタビュー ~New single『Hold On/Back Again』 リリース記念~

ジャケット


1月13日(日)、NAHAVANDより約1年半ぶりの楽曲リリース New Single『Hold On feat.Gotch 』/『Back Again』がストリーミング配信された。


※以下で配信中


iTunes http://hyperurl.co/nahavandsingle
Apple Music http://hyperurl.co/nahavandsingle2


Spotify https://open.spotify.com/artist/6SRdu5OZsWkynxunYMvnZY


Google Play http://hyperurl.co/nahavandsingle3


Amazon http://www.amazon.co.jp/dp/B01N2VICFL


前作で「彼らを全面的に支持する」というコメントを出したGotch(ASIAN KUNG-FU GENERATION)が mixing/masteringを担当。さらにそのGotch氏をゲスト・ボーカルで迎えた『Hold On』は、洗練されたグルーヴ感でNAHAVANDの音楽的な飛躍が伺える意欲作だ。


しかしながら、ここに至るにはバンドの終わりを考えるほどのスランプに陥ったとのこと。危機を乗越え、曲がいかにして生み出だされたのか?フロントマンの宮内氏を取材した。

image1__


インタビュアー &text :TJ  2016年12月11日 某所にて


── 前の『Two Of Strongest』をP-VINEからリリースしたのが2015年の8月だよね。結局その後はバンドから音沙汰が無くなったし、どうやって今回のリリースに繋がっていったの?


宮内:『Two Of Strongest』は2014年に自主で出した物をリミックスして出したので、NAHAVANDとしては1stアルバムを全国流通させて、それを足がかりに2ndアルバムを出したいってP-VINEと話してたんですよ。


ただ思ったよりアルバムが売れなかった。曲が良くなかったんですけど。でもその時は過信してたから結構食らっちゃって。長く付き合った彼女と別れたり、仕事も辞めて、曲もできないわで気分も落ちてくし。最低でしたね。


── 結局ライブだってリリース後に2回くらいしか無かったしね。


宮内:そうっすね、しかも東京で2回。それで落ちてたら今年の2月くらいにゴッチさんがメールくれて。「続けないと(世間に)すぐ忘れられるから曲作ってビデオ発表したり、続けないとだめだよ。」って。ゴッチさんのスタジオで1stアルバムをレコーディングしたのは知ってますよね?きっかけもらったのに、俺なにやってんだよってまたやる気出して、時里と曲を作り出したんですけど、やっぱ俺が納得いくものが出来ないんですよ。気分転換で好きなトラックメイカーの曲にラップ乗せてたんですけど、むしろそのほうがハマったりして。NAHAVANDでやる意味すらわかんなくなってきて、終わりだな、みたいな。本当はそこで新しい音を探そうってなるべきだったんですけど、バッドでしたよね。


── そんな危機が・・。求める音が変わってきた?


宮内:Chance The RapperのアルバムからSABAとかYoung ThugとかLil Yachtyにリンクして、トラップとまではいかないにしろ、リズムを重視した曲をやりたいって思ったんですよ。まずはBPMがっつり落とそうって思って。


── トラップ・ミュージックのアプローチで?


宮内:いや、今回の2曲ではトラップに手は出してないんですけど、2ndアルバムでは何曲か。まぁ、そんで時里から『Hold On』の原型になるトラックが届いて。「これだったらやってみたいな」って思ったんですよ。


── おお、挽回だ。


宮内:仮歌を入れてゴッチさんに送ったら「これいいじゃん」って気に入ってくれて、「最近ミックスとかマスタリングの勉強してるからよかったらやらせてよ。」って。勉強してるって言っても、ゴッチさんだったらギャラ払ってやってくださいって話いっぱいあると思うし…。ゴッチさんの気持ちっつーか、フックアップですよね。それで『Hold On』の製作が始まりましたね。



── 『Hold On』は音楽を辞めそうになったエピソードをそのまま独白してるよね。



宮内:たしか、もっと暗めの歌詞だったんですよ。


1バース目も「音楽を辞めよう」って気持ちを投影した、暗めな内容だったんですけど、ゴッチさんから「(共感してもらうには)内省的過ぎると思う」って言われて書き直したりして。書き直すうちに、自分の膿を出すように書いてた歌詞が、俺と同じように音楽でも、映像でも、スポーツでも、好きな事を諦めかけてる人に響く表現に変えたいなと思って。


 そのタイミングでアジカンの『ワールドワールドワールド』ってアルバムを聴いて、アフターダークって曲があるんですけど、その歌詞に「夢なら覚めた だけど僕らはまだ何もしていない 進め」ってラインがあって、マジで神の啓示うけた感覚になって(笑)そのままサンプルして録って、送ったんですよ。


── そのまま(笑)


宮内:それで怒られたら歌詞変えようと思ってたんですけど、返ってきたゴッチさんのフックで「真昼の怠惰」って歌ってくれてて、これもアフターダークの歌詞で。ちょっと男としてカッコよすぎるなっていう。辞めかけた俺らと音楽業界の第一線でやってるゴッチさんとの対比が必要だった気がするし。 一緒にやれてよかったすね。


── この曲はリズムが新鮮なんだけど、その割に歌詞が浮き上がっててハッキリと内容が伝わってくるんだよね。このバランスが特徴的だと思ったんだけど、そういうところは意識してた?


宮内:英語を多く入れたり、無理に韻を踏んだり、フロウ刻んだり、さらにリズムを複雑にする事はできますけど、NAHAVANDは活動初期から歌詞について言及されることが多かったし、ゴッチさんのフックでも「錆びついた言葉 磨けよニハーヴァンド」ってあるように、言葉を評価してくれてたってのは自覚してて、リズムを優先させてまでラップが聴き取れないのは避けたかったんですよね。


── 全体的にマイナー調ってところは内省的な心象をリアルに現してる?


宮内:NAHAVANDでいえば『MUSIC』なんかの派手な曲が好きな人の方が多いのかもしれない。無理すれば書けますけどね、今はシリアスな曲しか作れなくて。なんでかわかんないけど。もう25ですよ、砂浜走れねーよみたいな。


── 一方で『Back Again』は明らかに外に向けたメッセージになってて、トラックの印象も変わるよね。


宮内:こっちはギターリフもので、リズムもシンプルだし、『Two Of Strongest』の延長線上にありますかね。この2曲のバランスがNAHAVANDっぽいかなと思いますよ。サンプリング一切なしでこんなクールなギターリフ弾けないですよ。それが武器だと思うし、時里と一緒にやる理由だと思います。


── バンド始めた頃を回想してて、かつてのバンド仲間の名前も歌詞に登場するよね?


宮内:NAHAVANDも最初の頃はサポートでベースとドラムに入ってもらってて。加藤マニさんのイベントで初めて東京に行ったのも四人だったし。最近だと思うんですけど、サポートの二人に時里が久々会った時に、一緒に東京行ってライブした事が「人生で良い思い出」って言ってたみたいで、それは嬉しいなって。もう音楽はやってないと思うけど、俺は今も君らのおかげで続けてこれたよって事ですよ。


──『Style Band Nahavand』のPVを撮ったのがマニさんのそのイベントに出た日だっけ?


宮内:いや、その次に東京行った時かな。もうその頃にはライブも二人でやってて。



── まだライブもしてない時期からマニさんにコンタクトとってたんでしょ?


宮内:2011年とかって、インディバンドのビデオって今ほど多くなくて。マニさんはもっと前から東京のインディバンドのビデオ作ってて、とにかくクールで。それを見た時に音源のローファイさをビデオで補う必要があると思った。俺らも撮ってもらいたいんですって連絡しましたね。本当に俺らはマニさんのおかげで色んなチャンスを掴めた。



──『Style Band Nahavand』のPVに一瞬出演してる幹宗さん(ex.The Cigavettes)は、撮ってる時点ではNAHAVANDを知らなかったんだよね?


宮内:なんでだっけな。俺が幹宗さんと同じビートルズのTシャツ持ってて、それで歌詞に"シガヴェッツのギターとTシャツ被ってるよ"みたいなライン書いたら、マニさんが面白がって一瞬出てもらいましょうよってなって。もちろん面識もなかったんですけど、『AFTER YOU』って4曲入りのEPを渡したら「お前らいいね」って気に入ってくれて、幹宗さんってSNOOZERのインタビューで毒舌ばっかで人の事褒めてるの見たことなかったから、まじかよって感じで。それからずーっと良くしてもらって。福岡アテンドしてもらったり、東京行った時は飯連れてってもらったり。


『Soul Dwells In Style feat.The Cigavettes』を一緒に作った時には、もしかしたら解散が決まってたと思うんですけど、最後に俺らと曲作ってくれたんですよね。 今だったらもっと良い曲になったのになって思いますけど。


─ 駆け出しの頃から比べて、バンドに対する考え方って変化した?


宮内:始めた頃は他者に対する"怒り"がエネルギーだったんですけど。そこは変化してきてるかも。『最強のふたり』のリリックに「折れない牙 挑発とビッグマウス」ってラインがありますけど、"折れない牙"は磨き続けて、それ見た奴がビビればそれでいいんじゃね?って思いますね。蹴落とすより引っ張るほうに回りたい。上手くやれてない奴にも影響与えて、そいつが良くなればいいし。


── 『Back Again』はロックバンドの名前が出てくるし「この意思 次のロックキッズに渡すよ」って歌詞で締めてて、ロックバンドへの思いの強さが伝わってくるよね。


宮内:やっぱり俺はJAY-Zとかカニエとかエミネムとかを聴いて音楽始めたんじゃなくって、リアム・ギャラガーだったり、ピート・ドハーティだったりジュリアン・カサブランカスだったりクレイグ・ニコルズだったり、ジャック・ホワイトだったり、それが染み付いちゃってるから。最近ギター背負ってる高校生見なくないっすか?ロックバンドやろうよって思いますね。ロックバンドは若い方がカッコいいし。


── そういう若いロックバンドをバックアップしたいと?


宮内:ゴッチさんやマニさんや幹宗さんがやってくれたように、できる事は少なくても、繋げていかなきゃって思いますよ。ただ、ボーッとしてたら誰かが連絡くれて「一緒に曲やろうか」って、そんな事ないですからね。良い曲作ったら世に出すだけじゃなく、どう広げるかまで考えなきゃいけない。


── そこだよなあ。サンクラをtwitterで発信して反応を待つだけって難しいと思うんだよね。


宮内:そうっすね、動き回って誰かに見つけてもらわなきゃいけない。アプローチが大事。図々しく、若さに任せてどんどんやったほうがいいですよ。この人とリンクしたいって見極めも大事ですけど。


── ちょっと話戻るけど、今回のリリースで反響があると思う?


宮内:待ってくれてる人に届けばそれでいいんじゃないですかね。前からNAHAVANDを知ってくれてる人にこそ響く曲なのかもしれないし。新しく知ってくれた人にとっても2017年は楽しい年にしたいですよね。行ったことない土地でライブもやりたいし。


── じゃあ2017年はライブのほうも本格始動だね!


宮内:ライブに関しては今までの考えが間違ってましたね。ギャラくれるならやりますぐらいのノリだったんですけど。NOWEARMANのライブ見て恋に落ちた事を思い出して。俺らもキッズにそういう体験をさせたいっすよね。


現在決定中のライブは4月9日(日)京都nanoの名物イベントmogran'Bar 。


チャージフリー(でもドリンクは要注文!)なので今回の音源で気になったリスナーは是非この機会に目撃すべし!


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■NAHAVAND(ニハーヴァンド)@NAHAVAND_TOR


2011年結成。宮内凌平と時里悠也によるロックバンド。フリーダウンロードのEP『AFTER YOU』がSNSで火が付き、即サーバー・ダウン。山本幹宗 (ex.The Cigavettes)


Gotch(ASIAN KUNG-FU GENERATION)などトップミュージシャンからも支持された。2015年、Gotchのレコーディングで1stアルバム『Two Of Strongest』をP-VINEよりリリース。2017年1月Single『Hold On feat.Gotch』/『Back Again』をストリーミング配信した。


<ライブ情報>


4/9(sun) OPEN 18:00~


mogran'BAR


京都 二条LIVEHOUSE nano http://livehouse-nano.com/


CHARGE FREE (1order please)


DJ mogran'Bar Crew


GUEST LIVE NAHAVAND / Native Rapper

プロフィール

HN:
TJ
性別:
非公開
自己紹介:
since 2008.

センスの良いインディ・ロックバンドと旅先の情報を発信。
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BEST WORKS.

→MV Dir :https://www.youtube.com/...
→Article :
https://belongmedia.net/tag/tj/...
→SOUND ENG:
https://www.youtube.com/...

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