12月2日18時20分。
タワーレコードマルビル店の新譜コーナーにて憤慨していた。
でかでかと配置されたGotch氏の「LIVE IN TOKYO」のコーナー。そこに沿うように、NOWEARMANの写真プレートは転がっていたが、この日店頭に並ぶことが情報漏えいされた(正確には次の日に発売)はずの新譜はあらず。
すぐそばに居たTシャツ姿のスタッフに「NOWEARMANほしいです!」と若干大きめの声で告げると、スタッフは店の奥から20枚くらい持ってきてくれた。「1枚だけ買います」と受取り、購入した。
ボクとNOWEARMANの関係といえばカレーだ。
新譜リリース記念の祝杯をあげるため、前からずっと行こうと思っていた「スズメバチ大阪駅前ビル店」に訪れた。こんな日だ。ここに挑戦するしかあるまい。
南森町の伝説のカレー屋さん「辛口料理 ハチ」。店主の引退で一度は閉店したのだが、一人のお客さんが引き継いだ。それがスズメバチ。
来店経験のある方はこの名前を見ただけで「ついに来たか」と思ったことであろう。
このスズメバチは数あるカレー専門店の中でも特別な店なのだ。
何が特別かというと、、すごく辛い。
今までも辛い店に訪れることはあった。例えば十三のスパスパスパイシーは結構辛い。
でも、スズメバチのカレーの辛さはまさに段違いだ。
お店は大阪駅前ビルの他の店舗にも似た、渋いガラス張りのカウンター席。
お店に入って席に座ると、すぐに「大盛り、中盛りは900円。小盛りは800円です」と笑顔で案内される。このタイミングは天満の名店「カルダモン」とほぼ同レベル。名店はシンクロするのか。
案内してくれた店主は例の後継者だろう。わずか3分程度でカレーは運ばれてきた。さらに一言。
「1度だけルーをおかわりできます」とのこと。
いいサービスじゃんとか思いながら、ひと口食べた瞬間!これは!辛い!舌がヒリヒリして味を感じられないくらい辛い。
ほとんど触感で口の中のものを判断するしかないレベル。本当に殺人的な辛さだ!
ふと、これまでの店主の対応をネガティブな印象で思い返される。
入店時の笑顔の件 → お前にこれが耐えられるのか?的な笑みなのか?
ルーのおかわりの件 →できるわけない。というか目の前のカレーすら全部食べられるか怪しい。
しかし、毎週カレーを食べ歩く決意をしたカレーレポーターが投げ出すわけにはいかない。
すべてを諦めて、スプーンを進めることにする。食べて行くと、ルーの部分はめちゃめちゃ辛いが、煮崩れた肉の部分は甘く仕上がっているということに気付いた。「ここで休息しながら攻略するか」としたが、ダメだ。あまりにもルーが辛すぎる。
お水を何杯も飲んでは少し食べ、としていると、店主から次のアドバイスが来た。
「このオリーブオイルをかけると辛くなくなります」
手渡されたオリーブオイルをかけると、なるほど辛さは少し引く。しかし、これはいいとかけていって、気が付いたらオリーブオイルだらけになってしまった。うーん。
四苦八苦しながらなんとか食べ進める。こんなの好んで食べる人いるのか?
と、ふと隣に座った常連らしいスーツのおじさんを見ると、意外に涼しい顔で食べてる。
しかも、店主からのオリーブオイルの助けもやんわり断ったうえ、ルーのおかわりをしてる。
そうか、ここは特別な人のためのカレー屋だ。ボクのような辛さ対応力がノーマルな人間は少々無理があるのだ。
しかし、そんなノーマルな人間でもなんとか完食できた。食べた後はぐったり。しばらく席から立てなかった。
「今どんな歌をうたい どんな服を着 どんな夢を見る?」
young old man - NOWEARMAN
生活に溺れてしまい、感性を捨て、無関心な選択を繰り返す"young old man”についての歌である。シャーロックホームズの「君は見ているようで観察はしていないのだ」というセリフにも通ずるメッセージソング。今回のアルバムでも後半をしめくくる名曲である。
ボクはこの歌詞に「どんなカレーを食べる?」を付け加えたい。
(あるいはライブの時に一部の歌詞を変えるでも可。フロアから呼応する準備はできてる)
例えば、カレーなら誰でも好きなんじゃんって安易で無難な発想でこのスズメバチに入ってしまったとする。これは大変な"出会い"になってしまうであろう。
音楽、洋服、夢 と同じくらいに、何を選択するか?が重要なテーマである。
ものすごい辛くて、もう2度とごめんだ。と思ってたスズメバチのカレー。
1日たった今となってはなぜか、かなり気になる存在になってる。
あの殺人的な辛さをどこかで求める自分がいる。新しい世界のはじまりか?
「でもまだ始まりには間に合うさ」なのか?
TJ
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